2007-01-01から1年間の記事一覧

『テロルの決算』沢木耕太郎(文春文庫) 主義や理念などの理想に、純粋であり続けることは、美しい。 だが、一方でそれはあまりにも不自然な、人間的ではない歪さを内包している。 なぜなら、人間は本質的に社会的な生物だからだ。 社会――すなわち他者との…

昨年夏に旧PCがお亡くなりになって以来、中断していた『WIZARDRY外伝―五つの試練―』シナリオエディタ用のオリジナルシナリオの製作を再開した。 幸いなことに旧PCのHDは無事だったので、そこから拾い上げることによって当時に用意していたアイテムデータは丸…

「WIZARDRY RPG OutLaws Edition」用キャンペーンシナリオのプロットその二。□#2.氷霧の結界 (the Front of Snowfield)■コンセプト 北欧をイメージした王国群北端の城塞都市が舞台。 王国群の教会が指揮する騎士修道会と地場の武神教団の対立と共闘。探索の…

「WIZARDRY RPG OutLaws Edition」用キャンペーンシナリオのプロット。HDDから発掘されたので備忘録代わりに掲載。□#01.天竜八部衆 (Valley of Eight Demons)■コンセプト 舞台イメージはインド亜大陸。密教的な世界観下での冒険。■背景設定 シャンバラー亜大…

『もうひとつの未来〜starry spirits〜』森口博子 今日、ゲーム屋の店頭を通りすぎる際に、久々に森口博子の歌声を聴いた。 PS2用ソフト『SDガンダム G-GENERATION SPIRITS』のデモが放映されており、その主題歌として流れていたのだ。 デモを観る分には、か…

『深夜特急(6)南ヨーロッパ・ロンドン』沢木耕太郎(新潮文庫) 青年沢木耕太郎の長かった放浪の旅が、終わる。 かつて学生の頃、友人から借りて本書を読んだことがある。暇さえあれば、ふらりと旅というにはおこがましい遠足の真似事を行なっていた頃だ。 …

『恋空―切ナイ恋物語』美嘉(スターツ出版) ケータイ小説として人気を博し、それを書籍化したという小説。 中高生を中心とした若者に支持を集めているとのことだが、なるほどそんな気がする。 いかにも携帯電話メールのような、記号を多用した独特の口語表…

東京都庭園美術館――世界を魅了したティファニー1837-2007 ひょんなことから足を運ぶこととなった。 東京都庭園美術館は、常設展示品となる所蔵品を持たない特殊な美術館である。 そもそもにおいて、建物自体が昭和初期に建築された元宮家の邸宅であり、都の…

『人の砂漠』沢木耕太郎(新潮社文庫) 八編からなるルポルタージュ。 その取材対象は様々だ。孤独死した老婆。元売春婦の養護施設。南海の孤島の人々。北海の国境際の漁港。屑の仕切り場。相場師。“不敬罪”の罪人。老詐欺師。などなど。 いずれも社会の主流…

『ローマ人の物語31 終わりの始まり(下)』塩野七生(新潮文庫) 五賢帝最後のマルクス・アウレリウス帝の後嗣コモドゥス帝が暗殺者の手によって斃れた後、ローマ担当長官ペルティナクスが近衛軍団長官レトーによって擁立され、帝位に上る。 実務経験豊富な…

「ガンセネ」こと「GUNDAM SENTINEL RPG OE」を使用した特別企画第二期キャンペーン・セッションの最終日。 結果として、予定していた4シナリオを遂行できずに、1シナリオが残り、完結できなかった。 やはり、イベントパートを増やすと1日4シナリオ実施は、…

『象の背中』秋元康(扶桑社文庫) 産経新聞で連載されていた小説を加筆修正した文庫本。 48歳のサラリーマン藤山幸弘が、末期ガンを宣告されたところから物語は始まる。 ガンはすでにステージ4に進行しており、余命は約半年。延命治療かホスピスの二択を迫…

『機動戦士ガンダムUC(1)(2)』福井晴敏(角川コミック・エース) 「ガンダムエース」誌で連載中の小説の文庫化。 ようやく最初から読めた。ここ最近、「ガンダム」の氾濫ぶりには根っからのガンタクにも関わらず少し引いていたが、これは実に面白い。 本作は…

『HOMEWORLD 2』(Sierra Entertainment) Windows用の宇宙を舞台としたSF系戦略級SGの洋ゲー。 しばらく前にネットで話題になっていたのだが、遂に手を出してしまった。 というのも、このゲームに「MOD」を追加することによって、ガンダムの戦略級SGとして…

国立科学博物館――中南米三大文明「インカ・マヤ・アステカ」展 何年ぶりだろうか。おそらく十数年ぶりに足を運んだ。 特別展の「インカ・マヤ・アステカ」展が24日で終了ということなので、終了間際で客足も遠のいているかと期待したが、甘かった。三連休と…

『犯人に告ぐ(上)(下)』雫井脩介(双葉文庫) 一気呵成に読んだ。時間を忘れ、引き込まれるほどに、実に面白かった。 かつて神奈川県警にあってノンキャリアとしては順風なコースを歩んでいた叩き上げの刑事、巻島文彦。だが、その運命はある事件によっ…

『私の骨』高橋克彦(角川文庫) 両親の死後、売り払われ解体された実家の床下から掘り出された古い壷には、なぜか“私”の生年月日が刻まれていた。その壷の中に納められていたのは、幼児の人骨。 “私”と検証を行なう刑事とのやりとりの中から、古い伝承と因…

『MCROSS PLUS The Cream P.U.F』SHARON APPLE(ビクターエンターテイメント) 唐突に、だが猛烈に「Infomation High」が聞きたくなって取り寄せた。 聞いてみれば、無性に劇場版『MACROSS PLUS』が観たくなる罠。

旧TRPGサークルを解散してからはや4ヶ月が経った。時の流れは、早いものだ。 元々、それぞれのメンバーの志向する方向性は一致していなかった。それでも、当時企画していたキャンペーン・シナリオを実施するために集めたので、そのシナリオ終了までは、指向…

『脳死臓器移植は正しいか』池田清彦(角川ソフィア文庫) 97年に国内初の脳死臓器移植が行なわれた際、その報道を聞きながら胸の内に湧き上がった違和感があった。 すなわち、永く人の死の基準であった心肺停止による心臓死ではなく、“脳死”という新しい死…

『聖戦のイベリア』SoundHorizon(KING RECORDS) 久々の新マキシシングル。 “聖戦”というキーワードもあり、全般的に「クロセカ」のような雰囲気が強い。 音楽というよりも、むしろ歌劇と呼ぶにふさわしい幻想物語。 毎度ながら、サンホラの曲は聴くにつれ…

『家族ペット――ダンナよりもペットが大切!?』山田昌弘(文春文庫) まず最初に明言しておくが、私は犬が好きだ。 かつて実家にいた頃、二回ほど犬を飼っていた。最初は柴犬、次はコリーだった。いずれも、私が餌やりと散歩を担当し、主に世話していた。二…

『裁判官の爆笑お言葉集』長嶺超輝(幻冬舎新書) 私の基本思想は、法家に近い。人間の本質は禽獣に近く、理知は容易く欲望に負ける。それゆえに、国家は厳正な法によって運営され、国民は法に基づく教育を受けて、禽獣から人間となるよう矯正されるべきであ…

『剣闘士スパルタクス』佐藤賢一(中公文庫) 共和制ローマ末期を揺るがした奴隷蜂起事件“スパルタクスの乱”の中心人物、元剣闘士スパルタクスの半生を活写した小説。 主人公スパルタクスの視点から乱の蜂起から壊滅に至るまで、史実を踏まえて丹念に描かれ…

『Ys ORIGIN ORIGINAL SOUND TRACK』(日本ファルコム) 第三シナリオをプレイしていたとき、最後に立ちふさがる“あの存在”を前にしたときの「THE LAST MOMENT OF THE DARK」から最終戦「TERMINATION」に切り替わった瞬間、背筋を奔ったあの戦慄を憶えている…

『パイレーツ・オブ・カリビアン ワールドエンド』 三部作の最終話。 前作最後でまさかの復活を果たしたバルボッサとともにジャック・スパロウ救出を果たそうとするエリザベスとウィル。その後を幽霊船フライング・ダッチマン号を手中に収めた東インド貿易会…

『少子社会日本――もうひとつの格差のゆくえ』山田昌弘(岩波新書) 劇的な少子化が進む現代日本。そこに至った経緯を豊富な統計データを元に読み解き、対策を提言した論考。 少子化に至った経緯を手繰っていくと、若者の晩婚化、非婚化がその根底にあること…

『感染症――広がり方と防ぎ方』井上栄(中公新書) 03年、東アジア諸国を席巻した新型インフルエンザSARS。不思議なことに、それらの国に渡航した日本人の感染者はゼロだった。 本書では、その理由を日本人の清潔好きな生活スタイルにあると推測している。 確…

東京国立博物館――レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の実像 来日した“受胎告知”を拝みに行く。 公開から少し経ち連休後なので、空いているのでは無いかと期待していたが、休日だけにやや混雑していた。 やはり、実物を前にすると複製や図版を観るのとは違った感…

『戦争概論』アントワーヌ・アンリ・ジョミニ著/佐藤徳太郎訳(中公文庫) “戦争論”といえばクラウゼヴィッツがあまりにも有名だが、本書を記したジョミニもなかなかどうして鋭い着眼点で戦争を論じている。 本書においては、「およそ兵学には、もしこれを無…