機動戦士ガンダムUC(1)(2)』福井晴敏(角川コミック・エース)
ガンダムエース」誌で連載中の小説の文庫化。
ようやく最初から読めた。ここ最近、「ガンダム」の氾濫ぶりには根っからのガンタクにも関わらず少し引いていたが、これは実に面白い。
本作は、“G”から“SEED”に至るまで、新世代ガンダムのことごとくが失敗してきた“世界”の構築に、成功している。
かつて富野監督が原型を作り、幾多の二次創作が育ててきたU.C.世界を上手く接いで、著者のそれに変えて表現できていることが大きいだろう。
舞台が宇宙世紀から移ろって以来、延々と続いている、主人公の“少年”が、“ガンダム”というマシンを操れるというだけで、“世界”の行く末を左右できるという虚構は、あまりにも軽薄で、幼さな過ぎる。
子供の観る巨大ロボット・ファンタジーとしてなら、それで成立させても良かろう。ならば敢えて「ガンダム」である必要は、もはやどこにも無いのではなかろうか。
人間社会は複雑かつ鈍重なもので、組織という存在は様々なしがらみで構築された巨大な機械装置であり、それらをひとりの人間で変革させることは、おそろしく困難だ。
かつて人類の革新“ニュータイプ”とされたアムロもシャアも、人類という途方も無く巨大な総体を前に、明確な指向を示し、変革へと導くことは出来なかった。
個人ではどうにもできない現実の壁と、それに対する希望としての可能性。歴代の本家「ガンダム」で提示されてきたのは、一貫してそれではなかったろうか、と思う。
本作においても、それぞれの組織が独自の目的遂行のために、個々の人間の思惑を超えて稼働し始める。大人の勝手な都合に反駁した少年は、少女を助けるために、純白のガンダムに乗る。
未来への可能性を示すという幻獣ユニコーンは、何を見せてくれるのか。楽しみだ。