ホビット 思いがけない冒険』
正月二日目にして、やることも特に無いので、観てきた。
かつての『ロード・オブ・ザ・リング』のクオリティを引き継いだ良作であった。
原作がかなり短いのでどうやって三部作にするのかと思ったのだが、いろいろと『指輪物語』の追補編からエピソードを追加しているらしい。
導入は、老いたビルボが袋小路屋敷で回顧録を書くためにかつての冒険を回想するように始まる。
未だ過酷な運命を知らないフロドが、ビルボの誕生祝賀会に来るガンダルフを迎えに行くシーンは、胸に迫るものがある。
一行のリーダーであるドワーフの王子トーリン“オーケンシールド”はかなり格好良い。名誉を重んじる高潔な人物だが、頑固かつ偏狭であり、竜やオークに対する強い復讐心を抱える様はまさにドワーフの鑑。
いやはや、13人のドワーフどもはどいつもこいつもファンタジーのテンプレート通りのイメージで実に微笑ましい。
最年長者バーリンの歳を重ねた重厚さと聡明さ、若いフィーリとキーリ兄弟のやや軽率ながらも気持ち良い陽気さ。いずれも典型的なドワーフだ。
火竜スマウグに奪われたドワーフの地底都市“はなれ山”エレボールへの遠い旅路。その道すがらの大自然が実に美しい。
まさかのオークロード“穢れの王”アゾクが出現。
ドワーフ一族とオークどもの因縁の歴史が語られるなど、中つ国の歴史を振り返るように親切なつくりになっている。
終盤、追いついたアゾクに追い詰められる一行。父祖を侮辱されトーリンは単身アゾクに挑むが、返り討ちに遭ってしまう。見かねたビルボはとっさに我が身を省みず、助太刀に飛び込む。
その英雄的な行動によって、ビルボはついにトーリンに認められる。この一連の流れが、良い。
随所に、『リング』のオマージュ的なシーンがちりばめられているのがまた良かった。霧ふり山脈地下のゴブリン王国下層でゴラムに遭った末に“ひとつの指輪”を手に入れ、偶然転んだ際に落ちてくる指輪をはめてしまうビルボは、まさに運命を感じさせる。
年明けて早々だが、年末に公開されるであろう二部『スマウグの荒らし場』が楽しみで仕方ない。