東京国立博物館 書聖王羲之―書を芸術にした男―
平日にゆっくりと行きたいところだが、とても有給休暇を取る余裕がないので行ってきた。
館内はそこそこの混み具合。いつもの企画展示の通り、入り口付近だけは異常に混んでいる。しかし、中盤になると途端に空きはじめる。
そもそも書をゆっくりと観覧するのは、まず書家か趣味人だけだろう。何となく行ってみた程度の興味では、すぐに飽きるのが関の山だ。
おかげで展示室中盤にあった行穰帖原跡と、新発見された大報帖、蘭亭序の特集については存分に拝めた。
漢字文化、というものは実に偉大である。
生憎心得がないので、草行書については満足に読めない。が、楷書であれば字面を丹念に追えば読めるのである。そう、千数百年前の文書が読めるのだ。
古来、洋の東西を問わず数多の名言、格言の類が発せられ、また残されてきたが、その墨痕が評価されるのは漢字文化だけである。その礎を築いた王羲之の功績は多大だ。
惜しむらくは、唐の太宗が副葬品として多くの真蹟を陵墓に納めてしまったために、その真蹟は残されていない。が、精巧な複製が多く作られたために、今日こうして残っていることは実に幸運であった。
紙は傷みやすく保存が困難ではあるが、ぜひとも末永く未来に残してもらいたいものだ。