『私の骨』高橋克彦(角川文庫)
両親の死後、売り払われ解体された実家の床下から掘り出された古い壷には、なぜか“私”の生年月日が刻まれていた。その壷の中に納められていたのは、幼児の人骨。
“私”と検証を行なう刑事とのやりとりの中から、古い伝承と因縁、それに駆り立てられた今は亡き両親の切ない親心が浮かび上がってくる――。
そんな表題作「私の骨」を含めた七編のホラー短編小説集。
幽霊や化け物は、得体が知れず、正体が知れないから怖い。
だが、たぶんそれ以上に怖いのは、実体を持ちながらも、なお得体の知れず、正体の知れない心の闇を抱えている、ごく普通の人間ではなかろうか。
恐怖の心髄を再認識させてくれる傑作。