『戦争概論』アントワーヌ・アンリ・ジョミニ著/佐藤徳太郎訳(中公文庫)
戦争論”といえばクラウゼヴィッツがあまりにも有名だが、本書を記したジョミニもなかなかどうして鋭い着眼点で戦争を論じている。
本書においては、「およそ兵学には、もしこれを無視すれば危機に陥るが、反対にこれにのっとれば殆どの場合勝利の栄冠を得るであろう若干の基本原理が存在する」といった観点から、著者の戦歴を踏まえて導き出された勝利の法則が挙げられている。
すなわち、「敵連絡線の遮断」「局地戦力の優越」「最重要局面への戦力集中」「最適期の主力投入」といった戦術の基本原則である。
現代戦においても鉄則とされるこれら原則を、史上初に言語化したジョミニは、やはり天才的な兵学家であったと思う。
また、近〜現代戦における生命線ともいうべき兵站に注目しているのもまた慧眼といえるだろう。戦争は底無しの消費活動である。その活動を支える兵站が、どれほど重要であるかを良く解説している。
惜しむらくは、本書が原文訳ではなく英訳版の抄訳であることか。かなり文意が変形しているであろう箇所が散見される。さすがに原書を読むのは無理なので、それが残念だ。