『剣闘士スパルタクス佐藤賢一(中公文庫)
共和制ローマ末期を揺るがした奴隷蜂起事件“スパルタクスの乱”の中心人物、元剣闘士スパルタクスの半生を活写した小説。
主人公スパルタクスの視点から乱の蜂起から壊滅に至るまで、史実を踏まえて丹念に描かれている。
身の危険から逃れるために衝動的な脱走を行ない、やがて反乱の首領として祭り上げられ、合流してくる大量の逃亡奴隷を纏めながら、派遣されてきた討伐軍を迎撃し、略奪によって生を繋ぎながらイタリア半島を縦横に迷走し、やがて追討軍を前に力尽き壊滅する。
それぞれの状況下において、英雄スパルタクスは怒り、喜び、迷い、悲しみ、驕り、焦り、そして昂ぶるままに死んでゆく。
その生々しいまでの剥き出しの感情、人間性こそが、ドラマを面白くする。