『少子社会日本――もうひとつの格差のゆくえ』山田昌弘岩波新書
劇的な少子化が進む現代日本。そこに至った経緯を豊富な統計データを元に読み解き、対策を提言した論考。
少子化に至った経緯を手繰っていくと、若者の晩婚化、非婚化がその根底にあることが分かる。ではなぜ、晩婚化、未婚化が進んだのか。本書では、さらに踏み込んで、その大本の原因を突き止めようとしている。
本書では、少子化の原因を若者の「所得格差」に求める。
バブル経済の崩壊以後、日本の産業・経済構造は劇的に変貌し続けている。IT化とグローバル化による構造変化によって、ほぼ全ての業界で再編が進み、全世界レベルでの競争が激化している。
その中にあって各企業は生き残りのために、人件費削減から正規雇用者の採用を絞り、非正規雇用、つまりパートやアルバイトで労働力を賄うようになる。
このような状況下で一番あおりを受けるのは若年労働者たちである。これは1990年代後半から、世界の先進諸国で一様に見られる社会問題でもある。
同じ状況下でありながら、なぜ日本はこうまでも少子化が進んでしまったのか。
著者は、各種統計データや多くのインタビューを元に、ふたつの問題を挙げている。
ひとつは男性の雇用条件の不安定化、もうひとつは女性のパラサイトシングル化を指摘している。
女性が結婚を考えるとき、相手となる男性の基準として、その経済力は重視するだろう。
独身時代に実家で生活をしていれば、親の所得に支えられ生活水準は高くなり、結婚相手にも同等のそれを望むようになる。そして、その高い生活水準を落としてまで、結婚を望むとは考えにくい。そのために女性は、理想基準を満たす男性と出会うまで結婚を見送る、という推論である。
しかし、現状の男性労働者の所得は伸び悩んでおり、女性の理想基準を満たす若年男性はむしろ減少している。そのために、晩婚化、非婚化が進んでいるというのである。
実際に本書で上げられている問題は、まさに自分の属す世代の問題であり、個人的にも身に迫る現実的な問題である。
しかし、まあ実際には、冷厳な現実を直視ししたとしても、どうこう変えられるわけでもなく、今まで通りに淡々と働いていくしかないのだが……。
たぶん、日本の少子化は、このまま歯止めが利かずにより進行してゆくのだろうなあ。