新しいシナリオをプレイする際、PCを作成するにあたって、そのキャラクター性を定める上で背景設定を用意することが多いのではないだろうか。
システムによっては、ルールで定められていることもある。(例えば『ダブルクロス』ならロイスとか出自がそれ。『デモンパラサイト』でもどのようにパラサイトされたか決めたりする)
しかし、実際のセッション中にそれらの設定がシナリオで活用されても動かない(動けない?)プレイヤーがたまに居る。
例として『ダブルクロス』を使おう。ロイスに設定した“幼馴染”が居たとする。GM側に立った解釈をすると、このプレイヤーは幼馴染に正体を知られないよう葛藤するプレイがしたいんだろうな、とか思う。
例として『トーキョーNOVA』を使おう。カブトがセーフハウスを用意していたとしよう。GM側に立った解釈をすると、このプレイヤーは危機に際して、そのセーフハウスを活用したいんだろうな、とか思う。
だが、実際にイベントを起こしてそのようなシチュエーション再現すると狼狽して、それらの設定を使いこなせないケースがあったりする。
ちなみに、先ほどの『ダブルクロス』の例だが、その幼馴染はミドルフェイズ中ほとんどノーマークで接点が薄く、事件に巻き込まれた後も積極的なフォローをせずに、クライマックス戦であっさりタイタスと化した……。
『トーキョーNOVA』の例については、ヒロインを保護したカブトはセーフハウスの存在を忘れていたのか、あからさまに連れ歩き、さらに単独行動の際にはモブNPCに預けてしまった。で、ヒロインはあっさりさらわれた……。
どうしてそうなる。
まあ、他にも“女好き”の特徴を取って女性NPCを一切口説かない(そして誘いに乗らない!)とか、重要NPCとのコネを取得しても一切使わないとかなんとか。枚挙にいとまない。
何か非常にもったいない。
個人的にはなまじGM経験が長いだけに、その“宙に浮いた”設定を拾いたくて堪らないのである。設定したプレイヤーは拾われたくないのだろうか?
ならばなぜに設定を起こすのだろう。それをシナリオで活用するために土壇場で工夫したGMに対して非常に失礼だと思うのである。
TRPGは複数のメンバーでともにプレイするゲームである。そしてゲームを進行させるのは会話である。
GMはシナリオとPC設定を活用してプレイヤーと会話しながらセッションを進める。そこでプレイヤーが自ら起こした設定を拒否したり放置するのは問題ではなかろうか。
自己満足のためだけの設定に意味はない。せめてそれなら、自分の脳内だけに止めて公表しないで欲しいものだ。

『YsI&II Chroniclcs ORIGINAL SOUND TRACK』(日本ファルコム
PSP用ソフト『YsI&II Chroniclcs』はプレイしていないのだが、今更のようにサントラを購入。
幾度となくプラットフォームを変えてアレンジされてきた『YsI』『YsII』、そしてその都度アレンジされたサウンドだが、原曲が神掛かった名曲だけに今回もそれなりに出来が良い。
今回のアレンジにはエレキギターが多用されていて、やや煩いがそれでも素晴らしい曲が幾つかある。
Disc1(Ys1)の「16.DREAMING」、Disc2(Ys2)の「12.ICE RIDGE OF NOLTIA」のヴァイオリンが傑作。
また、Disc2(Ys2)「18.PALACE OF SALMON」のクラシックギターアレンジも良い。
ボーナストラック「31.TO MAKE OF THE END OF BATTLE」も今回のアレンジテーマに沿っており、なかなか。
Disc2(Ys2)のエンディングヴォーカル曲が「In Adventure World」だったのはちょっと感動した。
それでも、個人的な『Ys』のベストエンディングヴォーカル曲は「Endless History」だと思う。南翔子ヴォイス最高。

刀剣博物館 古刀新刀名作展―多彩なる色金の世界―
HPのアクセス案内では京王線初台駅下車徒歩5分、とあったがかなり迷った。
上空では雲行きが怪しくなる中、物静かな住宅地を汗だくになりながらさ迷い歩き、ようやく建物を発見した。
さすがに平日、かつ展示物の特異性からか、先客は外国人観光客らしい白人の青年がひとりだけだった。その彼も10分程度で居なくなった。
ここは財団法人日本美術刀剣保存協会の運営する日本刀を展示している博物館である。
先日ひょんなことから企画展示の「古刀新刀名作展」の展示品目録を見つけ、近々に足を運ぼうと思い立っていた。そして今日訪れた次第である。
“名作展”の名は伊達ではない。すさまじいラインナップが揃っていた。
ざっと挙げると、伯耆安綱、備前友成、粟田口国綱、藤四郎吉光五郎入道正宗、来国光、備前長船兼光、備前長船長義、青江恒次などなど。名物はさすがに無いもののそれを鍛えた刀匠の作がずらりと並んでいる様は実に圧巻である。
古刀ばかりではない。越前康継、長曽祢興里虎徹入道、興正の作もある。特に興里の作は前期と後期それぞれ一口に脇差一口まである豪奢さ。
虎徹を見たら偽物と思え、というのが刀剣商の常識だが、その真作が3本も並べばある意味怪談である。
そのお化けに“三ツ胴裁断”と金象嵌が切ってあれば、真夏の怪談ばりに背筋が寒くなる。凄まじいものを見てしまった。
冷気を感じたのも一瞬。表に出れば、やはり暑かった。

GUNDAM SENTINEL RPG OE」を用いたセッションを2日連続で開催、全6シナリオのキャンペーンを終えた。
前回のセッションにて、1回のセッションで用意した4シナリオを使い切れず悔いを残したので、今回はシナリオを使い切れるような時間進行を想定してセッションに臨んだ。
シナリオ年代は94年。ネオジオン残党軍が月近海で活動を再開し、その掃討命令を受けたPC所属部隊は戦いの中で、意図的に戦火を月面都市に及ばせようとしている何者かの意図を見抜く。ネオジオン残党軍の背後には政経軍にまたがり利権を貪ろうとしているシンジケートの影があった。そしてその戦場には、望まざる戦いに身を投じようとしている青年と少女の姿があった……。そんな筋書。
で、最序盤に幾つか用意していたセリフを使うタイミングを逃した(ヒロインの名前を出し損ねた!)ためにイベント進行に危機が生じたものの、プレイヤー諸氏のフォローによって伏線が拾われ、ストーリーはそれなりにきれいにまとまった。
因果な血脈によって不本意ながら戦いに駆り出された青年と彼に寄り添う創られた運命の少女。
プレイヤーたちは悲劇の恋人たちを救うことに成功した。隠された真の黒幕も戦場に引き吊りだして倒したので、まあほぼ満点の展開だっただろう。
用意した伏線はほぼ回収され、かつ戦闘においてもPCをかなり追い詰めることも出来たのでGMとしても満足なプレイだった。
なお今回のシナリオの元ネタとしては、『MSV90』と『ネオジオンの亡霊』から一部プロットを拝借している。投資経済が戦争を誘発するくだりは『ACECOMBAT X2』から。
これでようやくネタの在庫が掃けた。当面ガンセネはもういいかなあ。

備忘録メモ。すべて刃長。
※2011/10/15、2012/04/05に加筆修正
備前長船倫光  四尺一寸一分(124.5cm) ※日光二荒山神社所蔵品
阿蘇蛍丸  三尺三寸四分(101.3cm)
厳流長光   三尺一寸(93.9cm) ※推定
備前長船兼光  三尺一寸(93.0cm) ※謙信兼光
大包平  二尺九寸四分(89.2cm)
鬼切安綱  二尺七寸九分(85.4cm)
数珠丸恒次  二尺七寸(81.1cm)
二つ銘則宗  二尺六寸四分(80.1cm)
三日月宗近  二尺六寸四分(80.0cm)
古今伝授行平  二尺六寸四分(80.0cm)
童子切安綱  二尺六寸四分(79.9cm)
備前友成  二尺六寸二分(79.3cm) ※厳島神社所蔵品
綾小路定利 二尺六寸(78.8cm)
鬼丸国綱  二尺五寸八分(78.2cm)
菊御作  二尺五寸八分(78.1cm)
獅子王  二尺五寸五分(77.3cm)
北条太刀  二尺五寸五分(77.3cm)
黒漆剣  二尺五寸三分(76.6cm) ※黒作大刀
長曾根虎徹  二尺四寸四分半(74.2cm)
小龍景光  二尺四寸四分(73.9cm) ※磨り上げ
大般若長光  二尺四寸三分(73.6cm)
髭切文寿  二尺四寸(72.7cm) ※舞草太刀を参考に推定
津軽正宗  二尺四寸(72.7cm)
笹貫  二尺四寸(72.5cm)
五月雨江  二尺三寸六分(71.5cm) ※磨り上げ
姫鶴一文字  二尺三寸六分(71.5cm) ※磨り上げ
日光助真  二尺三寸五分(71.2cm) ※磨り上げ
切刃貞宗  二尺三寸五分(71.2cm) ※磨り上げ
稲葉江  二尺三寸(70.9cm) ※磨り上げ
青木兼元  二尺三寸三分(70.6cm)
山姥切国広  二尺三寸三分(70.6cm) ※山姥切長義の写し
九字兼定  二尺三寸三分(70.56cm)
一期一振  二尺二寸七分(68.7cm) ※磨り上げ、元は二尺八寸三分(85.7cm)
村雲江  二尺二寸五分(68.2cm) ※磨り上げ
宗三左文字  二尺二寸一分(67.0cm) ※磨り上げ、元は二尺六寸(78.7cm)
妙法村正  二尺二寸(66.4cm)
児手柏包永  二尺二寸(66.4cm) ※磨り上げ、元は二尺六寸(78.8cm)
圧切長谷部  二尺一寸四分(64.8cm) 
小烏丸伝天国  二尺七分(62.7cm)
南泉一文字  二尺三寸(61.5cm) ※磨り上げ
朝嵐勝光  二尺(60.6cm)
にっかり青江  二尺(60.3cm) ※磨り上げ、元は二尺五寸(75.7cm)
骨喰藤四郎  一尺九寸四分(58.8cm) ※薙刀直し
雷切  一尺九寸三分(58.5cm) ※磨り上げ
鯰尾藤四郎  一尺二寸七分(38.5cm) ※薙刀直し
火車切広光  一尺二寸七分(38.5cm)
獅子貞宗  一尺二寸五分(37.8cm)
会津新藤五  八寸四分(25.5cm)
不動正宗  八寸三分(25.0cm)

WIZARDRY RPG OE」のアイテム実装に漏れた刀系装備案。いずれも著名なものだが、特徴を付けることができずに選考に漏れた惜しいものばかり。供養を兼ねてちょっと挙げてみる。


大包平
古備前派の名工、三平のひとり包平の作。童子切安綱と並び、日本刀の最高傑作と称される名刀。
※実に素晴らしい太刀だが、エピソードに乏しいので泣く泣くオミット。


一期一振
粟田口吉光の作。短刀の名手として知られる吉光が、唯一作刀した太刀のため、この名で呼ばれる。関白秀吉が愛用し、その小柄な体格に合わせて六寸(約18cm)も磨り上げられてしまった。
※吉光の作としては、すでに“骨喰藤四郎”を採用しているのでオミット。大磨り上げされたので、ホビット族専用としたら面白かったかもしれない。


大般若長光
備前長船長光の作。足利将軍家に伝来した名刀。号の由来は、銭六百貫とされた破格の代付を大般若経六百巻に掛けたため。
長光の作として、すでに“燕切(物干し竿)”を採用しているのでオミット。


三日月宗近
三条小鍛治宗近の作。天下五名剣のひと振り。号の由来は、刀身に三日月の打除けが多く見られることから。細身で反りが大きく、踏ん張りの強い優美な姿から、最も美しい太刀とも称される。永禄の変に際して、剣豪将軍義輝がその最期に振るった太刀ともされる。
※これも素晴らしい太刀だが、エピソードに乏しいので泣く泣くオミット。


■数珠丸恒次
備中青江恒次の作。天下五名剣のひと振り。日蓮上人の護持刀であり、身延山を開山する際に柄に数珠を掛けていたことからこの名で呼ばれるようになった。
※由来から考えると修道僧や聖あたりが装備できると面白い。が、両クラスともに「剣」技能を習得できないので実装を断念。


■九字兼定
美濃関鍛治、和泉守兼定の作。同じ関鍛治、孫六兼元と並び称される名工。特に二代目兼定名工の誉れ高く、銘の定の字がウ冠に之を書く独特の字体から、通称“之定”と呼ばれる。銘に“臨兵闘者皆陣烈在前”の魔除けの九字が切られている。
※破邪の九字銘が切られているのが面白い。が、特にエピソードが無いのが惜しまれる。


■朝嵐勝光
備前長船派の刀工、勝光の作。号の由来は西園寺公経の詠んだ歌「はげしくも落ちくるものか冬山の 雪にたまらぬ峰の朝風」から、その切れ味になぞらえて付けられた。
足利将軍家重代の宝剣であり、永禄の変に際して剣豪将軍義輝が使用したとの伝説もあるが、その他のエピソードに乏しいのでオミット。刃長二尺(約60cm)と短い打刀なので、補武器としても良いだろう。


■姫鶴一文字
備前福岡一文字派の作。越後上杉家伝来の名刀。上杉家特有の鍔の無い合口拵えとなっている。謙信公が愛用したとされる。あるとき謙信公の命により磨り上げるために研師に預けられたが、研師の夢枕に鶴と名乗る美しい姫君が現れ、身を切らないように懇願したという。そのことから、姫鶴の銘で呼ばれる。
※エピソードは面白いが機能に反映できないので惜しくもオミット。軍神謙信公愛用の長剣だけにたぶん男性専用。


■にっかり青江
備中青江派の作。ある夜半、荒野を急ぐ侍がにっかりと笑う怪女に遭う。化生と思い定めた侍は女を斬るが、手ごたえ無く女は消え失せた。翌朝、検分してみると古びた石塔の首が落ちていた。このことから“にっかり”の号で呼ばれる。
※伝承から魔法生物属二倍打撃を付与するとそれらしいか。後に大きく磨り上げられたため、採用する場合分類は脇差だろう。


■小龍景光
備前長船景光の作。号の由来は、はばき元に倶利伽羅龍の彫り物があることから。後世に磨り上げられ、龍がはばき元に半ば隠れたことから“覗き龍景光”とも呼ばれる。南朝の義将楠正成が佩用したとされる。
※特にエピソードが無いのが惜しい。義将楠公が佩用したことから善属性専用か。


■山伏国広
堀川派の祖。新刀初期の名工。彫り物にも長け、刀身に不動明王と“武運長久”の銘が彫り込まれている。なお、国広は山姥切長義の写しを打ったことでも知られる。
※新刀(作刀年代1500年代末頃)なので時代考証的に不可。


■井上真改
摂津の新刀鍛冶。俗に“大坂正宗”とも呼ばれた。朝廷に作品を献上し、十六葉菊紋を切ることを許されている。池波正太郎鬼平犯科帳』での長谷川平蔵の佩刀として有名。
※新刀(作刀年代1650〜1682年)なので時代考証的に不可。


■呑取
天下三名槍のひとつ、名物日本号。刃長二尺六寸(約79cm)の豪壮な大身槍。元は御物であり「槍に三位の位有り」と謳われた名槍である。正親町天皇から足利義昭に下賜され、後に豊臣秀吉の手に渡り、賤ヶ岳七本槍筆頭の福島正則に与えられた。後年、黒田家の家臣、母里太兵衛友信が福島正則よりこれを呑み取ったことから“呑取”の号で呼ばれる。この挿話は今なお「黒田節」として謡い伝えられている。
※非常に美しい槍であり、かつ面白いエピソードがあるが、機能に反映しづらい。状態異常に酩酊でもあれば、酩酊無効化とか付けて面白いのだが……。

『風の邦、星の渚 レーズスフェント興亡記 上・下』小川一水(ハルキ文庫)
かつて、TRPG用シナリオとしてある都市の開闢から滅亡までを描いた物語を構想したことがある。
だが、考えていたことをものの見事に、より精度を上げて実現されてしまった。
もっとも、私が考えていた以上に、面白いので大満足だ。


本書は、神聖ローマ帝国時代、14世紀ドイツの辺境を舞台とした仮想歴史小説である。
騎士ルドガーは父に疎まれ、辺境のモール荘の代官として派遣される。そこには寂れ荒れ果てた農村があった。そして、そのささやかな村にすら流賊の襲撃予告がもたらされる。
この地で、ルドガーは不思議な女レーズと出逢う。遥かな昔、共和制ローマ末期の武将の名を挙げるその女は、この地にかつて栄えたローマ時代の都市の再現を求める。
ドガーはその求めを引き受け、かねてより考えていた新たな都市の構想を実現するべく、活動を始める。そして、その都市は“レーズスフェント”と名付けられた……。
なお、このレーズなる女は地球外から訪れた知性体である。彼女は影響力を行使するが、街を勃興させるのは、ルドガーをはじめとする人の意志と力によってなされていく。
利益によって人心は動くが、それ以上に心意気によって結びつく。なんとなく、和田竜の『のぼうの城』が脳裏をよぎる。
惜しむらくは、本書は“興亡記”だが、勃興のみしか語られていない。いつか滅亡にいたる話も、ぜひ読みたい。