『シーザーの晩餐 西洋古代飲食綺譚』塚田孝雄(朝日文庫
タイトルは、本文中で引用されるニコマコスの断章よりの抜粋。
極端な例えではあるが、言い得て妙な言葉かもしれない。
文明レベルを指し示す一種のバロメータは、間違いなく食文化であろう。
多様な食文化は、高度な流通網なくては成立しない。高度な流通網は、広域な治安維持によってのみ維持される。広域な治安維持は、圧倒的な軍事力によってのみ為しえる。圧倒的な軍事力は、卓抜した統治機構によってのみ制御される。
つまるところ、古代ヨーロッパの大半を領有したローマ帝国だからこそ、このようなヴァリエーション豊かな食文化が成立できたといっても過言ではなかろう。
本書は、共和制末期から帝政中期頃までのローマの食文化について、数々の挿話を交えつつ紹介している。
こうしてみると、現代でも通用するようなメニューの数々が、遥か二千年以上前に考え、作り出されていたということに、あらためて驚かされる。
さすが世界帝国の先駆けローマ、といったところか。