『絵で見る十字軍物語』塩野七生(新潮社)
基本的に塩野七生の著作は、すべて文庫で買うことにしている。
というのも、日々本を読むのはもっぱら出勤帰宅途中、あるいは仕事の移動中の電車の中、と相場が決まっているからである。
だが、店頭で手に取ったこの本は、迷わずそのままレジに持って行った。
おそらくは、いずれ文庫版が出ることは間違いない。
だが、挿絵のギュスターヴ・ドレの絵は単行本のサイズでじっくりと眺めたかった。それが本書を購入した理由である。
ギュスターヴ・ドレといえば、真っ先に頭に浮かぶのはダンテの『神曲』あるいは、ミルトンの『失楽園』の挿絵であったが、十字軍についての著作の挿絵も描いていたとは知らなかった。
本書では11世紀末の第一次十字軍遠征の勃発から、1571年のレパントの海戦までをドレの挿絵に解説を加える形で、約500年に渡る西欧のキリスト教圏国家と中東のイスラム教圏国家の闘争の歴史を俯瞰している。
この二大宗教の対立は、1000年が過ぎた現在もなお続いている。
歴史を振り返り、その問題の根源を思索するという三部作がこれから来年にかけて発表されるという。
期待して待つことにしよう。