『「婚活」時代』山田昌弘/白河桃子(ディスカヴァー携書21)
いやはや、またも面白い造語を作り出したものだ。「婚活」とは言いえて妙というべきだろうか。
本書では、結婚はもはや必要材ではなく嗜好品になっているという。この指摘はけっこう的を射ているのではなかろうか。
かつての日本社会では、男は仕事だけしていれば良く、女は家庭に入り家事を専業するという選択肢しか、ほぼなかった。男は生活的に女に依存し、女は経済的に男に依存する形で、結婚が成り立っていた。
しかし、現代においては、価値観の変化や雇用制度の自由化によって、誰でも独りで暮らしていけるようになってきた。男も女も自活できる状況になり、結婚は必ずしも必要なものではなくなってきたといえるだろう。
必須ではなく嗜むものであれば、その要望レベルは上昇する。こうして、結婚へのハードルは高くなる。こうして未婚・晩婚化が進んでいる、と分析している。
まあ、現在の政治/経済情勢の不安定化を見るに、不可逆的な選択である結婚に踏み切るには、相応の覚悟と生活基盤の確立が必要不可欠である。
かといって、条件にこだわれば対象はより狭まっていく。それもそのはずで、条件が揃っている対象はそもそもごく少数で競合も多く、だいたいの場合はさっさと結婚しているからである。
そのため、理想的な相手との出会いを待ちわびて、待ちぼうけというのが、現在の未婚・晩婚化の現状であるとしている。
だから、結婚を希望するのであれば、それを目的とした活動「婚活」をする必要がある、というのが本書の主張である。
「婚活」してまで結婚したいかどうかは、その人の人生観に拠るだろう。だが、何もしなければ、誰にも逢えず、故に誰にも択ばれない人生を送ることになる。
いずれにせよ、ごく自然に出会い、恋愛の末に結婚というストーリーは、もはや限りなくファンタジーの領域に近づきつつあるのかもしれない。