『偽善エコロジー―「環境生活」が地球を破壊する』武田邦彦幻冬舎新書
ここ最近、とかく強調されることの多い“エコロジー”な活動に対して、疑問を投げかけ、反論を述べている。
私自身、世間的に主張され実施されているエコ活動は、ほぼ意味を成さない愚行である、と思っているクチなので、著者の主張はよく理解できる。
さりとて、世間の人びとは、純粋に善意と問題意識から“エコロジー”な活動を心がけ、また実行していることだろう。
ただ、非常に残念なことだが、それらは政治的かつ営利的な目的によって扇動されているのが、その実情だろう。
よくエコ活動の象徴として指弾されるレジ袋が姿を消しても、ゴミ袋は必要となる。材料はいずれもポリエチレンであり、ひいては石油である。結局、有料化されているだけで、石油は消費される。
しばらく前まで騒がれたダイオキシン問題も、いまやほとんど聞かない。要はゴミ処理施設の更新化を進めるための口実であったとしか思えない。
環境問題も税金が使われれば一種の利権になるということを、冷静に指摘している。
本書における反エコの論拠とされる情報には粗が多く、そのまま鵜呑みにするのは危険ではあるが、挙げられた数々の疑問点にはそれぞれ一考の価値がある。
だがおそらくは、現代の資本主義によって育まれた消費型文明が打倒されない限りは、環境破壊は資源が尽きるまで止まるまい。
いずれにせよ、人類の未来を左右するのは日本では無く、地球人口の約半分を占める中国とインド次第である。
地球環境の保全などという大事業に際して、たかだが1億ちょっとの日本人の影響力など微々たるものだ。
ましてや、各家庭で何をやろうとも、効果の程は高が知れている。個人のエコ活動などは幻想にしか過ぎない。