『百鬼解読』多田克己/京極夏彦講談社文庫)
妖怪の解説本。
本書では、鳥山石燕の「画図百鬼夜行」などの妖怪図に描かれたものを中心に、その由来から正体までを詳細に解説している。
石燕の描いた妖怪図には、その博識強覧と諧謔が如何なく発揮され、中には石燕の創作したオリジナルの妖怪も含まれる。
それもそのはず、妖怪図が本来想定している閲覧者は、江戸の通人たちであり、当時の教養と風俗に通暁した彼らであれば、その絵解きもたやすく行なえたであろう。
しかし、今日の一般的な閲覧者にはハードルが高く、難解である。
そこで本書では、絵図に散りばめられたヒントをもとに、石燕の意図をわかりやすく読み解いている。
惜しむらくは、挿絵が石燕オリジナルのアレンジではなく、写真のイメージを背景としたイラストとなっていること。
せっかく、本文で図版に込められた石燕の意図を読み解いているのであれば、挿絵もそれにマッチしたイラストの方が良かったのではなかろうか。
良い雰囲気の挿絵だけに、そこだけが残念である。