『法医学ノート』古畑種基(中公文庫)
本書は1959年に中央公論社から刊行されたものを復刊し文庫に収録したものである。
さすがに、約50年前の刊行物なので、一部内容において問題のある表現や、今日の医学的見地とは異なる記述もあるが、きわめてわかり易い法医学の入門書となっている。
特に一章「毒および毒殺物語」においては、犯罪史によく登場する代表的な毒物について、発見の経緯から、その中毒症例など、実際の事件を交えてよく解説している。
それらについては推理小説などのフィクション上での活用例しか知らなかったが、実例を元にした詳細で専門的な解説を読むと、さすがにぞっとする迫力がある。
間違っても法医学の世話にはなりたくは無いが、知っておいて損の無いこともある。いつ何時に何があるかわからないのが、人間の世界というものだから。