『韓国の暴走 「反日親北」をやめられない』呉善花小学館文庫)
盧武鉉政権に入ってからさらに「反日親北」路線に傾く韓国。なまじ隣国だけに対北朝鮮戦略上においての影響力も大きく、その動向をただ生温かく見守っている訳にもいかないのが、日本の辛いところである。
しかし、本書を読む限り、韓国の近代化はだいぶ遅れているようだ。
親日反民族法」の制定などを見るに、祖先の罪は子々孫々に受け継がれるという連座制度が支持されるということは、その精神構造はむしろ第三世界特有の前近代性から脱却できていないということだ。
また、97年の通貨危機対策としてIMFに強いられた金融政策に対して市場経済に幻滅し、米国主導のグローバル経済に反感を抱いているという。つまり、官民ともに自由資本主義経済に対応できていないということになる。
さらに報道すらも中立性を確立できていない。国営放送KBSは与党の広報に過ぎず、新聞すらも広く購読されていないという。つまり、その国民思想は客観的ではなく、政府の情報操作に容易く扇動されるということである。
その上で、民族主義が台頭し始め、ミニ中華思想ともいうべき自民族優越主義が勢いを増してきたという。ともなれば、大国である米国に果敢に対抗する北朝鮮が、韓国において賞賛される理由も分かるというものだ。
韓国の「反日親北」政策に関して、政府はそのメリットとデメリットを冷静に判じきれていない。むしろ、鬱屈した国民感情そのままに推し進めているように思える。
その「反日親北」政策を主導する盧武鉉大統領の任期はあと1年。仮に国家指導者が代替わりしたとして、韓国の国家戦略は変わるのだろうか?
本書を読む限りは、韓国が近代国家として成熟するまでもうしばらく時間が掛かりそうな気がする。それまでは、その感情的な「反日親北」傾向は変わらないように思えてならない。まったく困ったもんだ。