『ドキュメント検察官 揺れ動く「正義」』読売新聞社会部(中公新書
犯罪を捜査し、法と証拠に基づいて起訴し、裁判で真実を追究する検察官。時折、東京地検特捜部による立ち入り調査などの報道で、その活動を見聞するが、その実像についてはあまり知られていない。
本書は05年4月から06年5月まで読売新聞紙上にて「検察官」という連載を元に加筆修正を行なったドキュメンタリーである。
いま、日本の社会情勢は目まぐるしく変動している。犯罪に対する見方も、とうぜん影響を受けて変わってきている。例えば、性犯罪や飲酒運転による交通事故、医療事故、少年犯罪などなど。それらに対する国民の処罰感情は、今までにないほど高まっている情勢がある。
対して、多くの刑法が成立してから数十年が経過している。法成立当時と現在の社会情勢は大きく変容しているが、法で定められた量刑は見直されていないものも多い。そのため時に、検察の判断が国民に容れられないことも起こりえる。実際に、そのような事例が、本書でも多く取り上げられている。今後の課題は、多い。
また、09年までに導入される裁判員制度を想定した検察の取り組みなども紹介されている。実際、この制度が発足すれば、国民も刑事裁判に関わらざるを得なくなる。もはや、刑事裁判を他人事として見ることはできない時代が迫っている。


それはひとまず措くとして、どうやら読売新聞社会部の発刊している“司法三部作”の最終章から手に取ってしまったようだ。裁判官と弁護士についてのドキュメントもあるようなので、ひとつ探してみることにしよう。