ヨイコノミライ 完全版』きづきあきら小学館コミック)
人格障害かもしれない―どうして普通にできないんだろう』磯部潮(光文社新書
「マンガを描かない高校漫研」の部長に祭り上げられた井之上は創作を志して、部員たちを説得して部誌の発刊を試みる。
マンガに屈折した想いを抱く青木杏は、彼ら漫研部員の半端な姿勢を許せず、それぞれ問題を抱える部員たち個別に近づき、揺さぶりをかける。
部誌創作の過程で、部員たちは互いに衝突し、やがて緩い連帯が壊れてゆく。最後に完成した部誌は、彼らに何をもたらしたのか……。


痛い。すごく、イタい。
ジャンルは違えど創作(モノ書きの真似事)に関わるオタクのひとりとして、軽く笑い飛ばせないイタさがある。彼らのヌルさゆえの挫折を、決して笑えない。
しかし、漫研のメンバーの大半が、分かりやすくデフォルメされているものの、いわゆる「人格障害」の症例(DSM-IV分類)を示しているのが、ちと気になる。
・青木杏 → 境界性人格障害自己愛性人格障害
・平松かの子 → 分裂病人格障害(最終的には精神分裂病を発症?)
天原 → 自己愛性人格障害
・桂坂詩織 → 境界性人格障害、依存性人格障害
・大門夕子 → 演技性人格障害(ただし、本人が自覚的に行っている節がある)
本来、オタクと人格障害に因果関係は無いのだが……。関連付けてもあまり違和感がないのが、さらにイタい。
たまたまタイミングよく人格障害について読んでいたので、予備知識によってダメージ軽減できたが、素で読んでいたらかなりへこみそう。フィクションで何よりである。
現実で、ここまで突き抜けてしまう例に遭遇することは稀だろうが、落とし穴はどこかにぽっかりと口を開けて待っているかもしれない。
自分の立つ位置を確認する視野と、均衡を保つ意志は、常に強く維持したいものだ。
それにしても、良くも悪くも多様性をもつ人間というものは、興味が尽かない。