アメリカよ、美しく年をとれ』猿谷要岩波新書
アメリカ合衆国の独立は、1776年である。わずか、230年しか経過していない若い国である。
しかし、成熟するにはあまりに早く成長しすぎてしまった。
今や世界最強の軍事力をひけらかし、他国との協調なぞ歯牙にもかけず、自国の利益のためにはあらゆる手段を使い、その意を通そうとする傲慢極まりない超大国――それが今日のアメリカ像と言えるだろう。
かつて、若く自由な気風に満ち溢れた国として、世界中に愛された国の面影は、もはや見る影も無い。
特に現政権になってから、その極右傾向に磨きが掛かっている。
筆者は、研究者として半世紀以上もアメリカと関わってきており、その愛着には脱帽する思いである。その指摘の通り、アメリカは恐らく今、転換期にあるのだろう。
覇者の驕りのままに独走し自滅するのか。自省し調和の大国として生まれ変わるのか。
多民族を自由と民主主義でひとつの国に制した経験があるのは、アメリカだけである。多様な民族性の混和が課題となるであろう21世紀で、アメリカは先例として世界のイニシアティブを握れるのだろうか。
本書は、そのひとつの可能性を示唆している。
が、正直どうだろう。このままの路線では、それはかなり難しそうだ。