ローマ人の物語25、26 賢帝の世紀(中)(下)』塩野七生新潮文庫
同時代のローマ人をして「黄金の世紀」と評したこの時代。広大な版図、民族を抱えた大帝国を統治するに足る、実力派皇帝が三代続いた僥倖に尽きると思う。至高の皇帝トライアヌス。帝国の防衛戦略を再構築したハドリアヌス。完成した帝国の繁栄を維持させたアントニヌス・ピウス。いずれも、己の役割を理解し、その任務を全うすることを選んだ、最良の為政者たちである。
ローマ帝国が幾多の王朝と決定的に異なる理由が、そこに在る。最高君臨者である皇帝は、後継者に血縁より機能を優先したということである。そして、後継者たちも自らが選ばれた真意を理解して、治世に臨んだ。
古代ローマ人は、維持という終わりの無い努力の大事さを理解していた。いかような組織でも、機能を維持し続けることは、細心の注意と油断ない努力と持続する根気が必要となる。
歴史には、学ぶべき点が多い。