下流喰い―消費者金融の実態』須田慎一郎(ちくま新書
かつて信金界のカリスマと呼ばれた故・小原鐡五郎氏の言葉だという。正しく金言であると思う。
しばらく前にだが、金銭問題で中学以来の友人と断交している。たかだか二万円にも満たない金額を貸したのだが、約束を何度も裏切られ半年が経った。さすがに、信頼を維持できずに決別した。
彼が、実は定職にも就かずパチスロや風俗にのめり込む生活破綻者であることに、薄々は気付いていた。複数の消費者金融のキャッシングにも手を出していた、いわゆる多重債務者であるということも。
もしあの時、貸さずにいたら今でも彼との友情は維持できたであろうか。そう思うときもあったが、本書を読むに、おそらくそれは難しかったであろうと納得せざるを得ない。
消費者金融との付き合いは麻薬に似る。必要なときに直ぐにATMで手に入る金は魅力的だろう。だが、ある一定以上の金額の債務を負った時点で、決して元の生活には戻れない。本書を読めば、消費者金融とはそんな“悪魔的ビジネスモデル”であることが、良く分かる。
大手消費者金融では、金利27%にも及ぶという。仮に借り増しを続けて合計200万円の借り入れをしていたとすれば、月額45千円を返したとしても、利息だけの支払いとなり元本はまったく減らない。つまり、いつまで経っても常識的な返済額では、27%の支払いから逃れられないのである。そういう仕組みになっているのである。
やがて、ハイリスクな顧客となった多重債務者は、より非合法で危険な“ヤミ金”へと流されるという。非合法なヤミ金では、より高い金利と過酷な取立てが待っていることは、想像に難くない。
今年1月に最高裁で「利息法」と「出資法」の間にあった“グレーゾーン金利帯”を認めないとの判断を下した。それを受けて、最近は行政サイドでも見直しの動きが見えている。良い傾向であるが、そもそも非合法のヤミ金に対する救済にはならない。既に多重債務者となったものに、救いの手は伸びないのである。


決別から約1年が経っている。彼は、借金生活から足を洗えただろうか。いまや連絡もつかないだけに、ただ彼の更正を願うしかできない。