今昔物語集 本朝部(中)(下)』池上洵一編(岩波文庫
先日のウチのセッションにて、次回単発セッションとして『ダブルクロス2th』をやることが決まり、そのキャラクターを作成したのだが、その際にGM担当の草壁氏より『アルターライン』を見せてもらった。
その中でも特に勧められたのが、追加ステージの“平安京物怪録”である。
うーむ。確かに俺好みのネタではある(←大学時代、中古文学専攻で主に伝承文学を研究していた)。
で、リプレイの『消え去りし楽園』に収録されている“京城月影抄”を立ち読みして、なんか変なスイッチが入った。


当初は講談社学術文庫で出ているモノを買おうと考えていたのだが、いかんせん肝心の本朝部が収録されていない。
そこで、本屋を数軒梯子して、岩波ブックセンターでようやく見つけたのが本書。
現代語訳は無いが、脚注がしっかり入っているので、十分に役立つ。
しかし、改めて思うに『今昔物語』は、ネタの宝庫だ。
“あやかし”とはいかなるものなのか、という問いに対する解を様々な例示をもって教えてくれる。
すなわち、不条理かつ到底理解できない怪奇現象、という不親切極まりないシロモノであるということだ。
大方の娯楽フィクションにおいて、事件は、原因>事件>解決というロジックで分解して解明されることを半ば義務付けられている。TRPGのシナリオにおいても、この数式は忠実に継承されている。
だが、そんなものは机上の空論に過ぎない。
本当の怪異は、そのように人間が理解できるほど、親切にはできていない。だからこそ、怪異なのだ。
仏法的な解釈のされる『日本霊異記』とはことなり、『今昔物語集』特に本朝部付、霊鬼や雑事あたりで語られる説話には、前後の粗筋無しに語られる生々しい怪異が溢れている。
たまには、こういう不条理極まりない怪異を語りたくなる。が、それではTRPGシナリオには、ならんよなー。