鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活』ハラルト・シュテンプケ(平凡社ライブラリー
発達した鼻を歩行肢や捕食肢として用いる哺乳類の新目が、20世紀末に発見されていた、というのである。
しかし残念ながら、後に行われた核実験によって、このユーモラスな生き物たちが生息していたハイアイアイ群島は海面下に没してしまい、今や地球上には存在しない。
同時に多くの資料、論文も島とともに失われてしまったが、残存する数少ない資料を元に編纂したのが本書である。


もちろん、ぜんぶ冗談だけれども。
本書は架空の哺乳類「鼻行類」を生物学的な論考の形式で紹介したパロディである。
精緻な図版や豊富な論文からの引用、解剖学や生態学など視点からの論考も差し込まれ、いちいちもっともらしく体裁を整えているあたり、芸が細かい。うっかりと、鼻行類の存在を信じたくなる(もっとも、コレは嘘だろっていうのも幾つか混じっているが)。
学問的な側面から眺めるファンタジー、というのもなかなか面白いものだ。