割と先入観に騙されている、と思う。
長い間、F.E.A.R.系システムの特徴とも言えるシーン制進行やハンドアウト、今回予告のようなシナリオ進行支援のツール類を、いちGMとしての立場では毛嫌いしていた。プレイヤー側がセッション中に思いついた発想や行動できる選択肢を狭めているように感じられたからである。
しかし、プレイヤーとしてセッションに参加してみると、意外と悪くない、とも思えるようになってきた。
当意即妙で、プレイヤーの要望やPCの突飛な行動に合わせて、セッション中にシナリオを再構築できる熟練のGMであるならば、セッション内容は流動的に流れるので、確かに今回予告は意味は無い。
GMの張った伏線を漏れなく拾い集められる熟練のプレイヤーならば、セッション進行の最中にシナリオの指向性を読みきれるので、プレ情報となるハンドアウトや、行動を狭めるシーン制進行は、むしろ足かせになるだろう。
しかし、誰もがそこまでの技量を持っているのか?
答えは、NOだろう。
そこで、GMが予め立てたシナリオ進行を予定どおりに無理なく進める手段として、俗にいうF.E.A.R.系方式のツールは非常に上手く機能する。
今回予告を聞くことによって、シナリオの傾向(シリアス/ギャグなど)をざっくりと把握できる。
GMが配布したハンドアウトを受け取ることによって、プレイヤーはそのシナリオで自分のPCが演じる役割を知る。
シーン制進行においては、シナリオに関わらないPCの無駄な行動を制限し、シナリオの指向性からPCを脱線させない。
これならば、まるでドラマや演劇のように、GMの作った筋書きどおりにセッションを運営できるだろう。確かにこのようにプレイすれば、誰でもGMをやれる。シナリオの予定どおりにセッションを進めることに特化したツールだ。
上手いことを考えたものだ。あらためてそう思う。


旅行に例えるならば、従来型のセッション進行方式は、気ままなふらり旅だろう。目的地に向かう過程で途中下車して観光名所を眺めたり、土産物屋によって特産物を買い求める。最終的には目的地手前で満足してしまい、そのまま帰ったりもする。そんな自由気ままな旅だ。
対して、F.E.A.R.系のツールを使ったセッション進行方式はツアー型の旅だ。コンダクターが緻密な旅程を組んでいて、観光ルートから休憩所での食事の手配もしてくれている。しかもガイド付きなので、名所の背景もしっかり教えてくれる。出発から帰宅までフォローする親切な旅だ。
どちらの旅行が、好みか。それは人によりけりだろう。この方法論が、セッション参加のメンバーに受け容れられるか否かの判定は必要だ。
それはひとまず措くとして、そういう方法論もひとつの選択肢として有りと考えられるようになったのは収穫だ。
自分が旅する分には、気ままな旅が望ましいが、それ以外ならばツアー旅行を企画するのも悪くないかもしれない。
やはり、視点が変われば、考え方も変わる。時には視点の転換も必要だと思う。
これで、ひとつの蒙が啓けた。