『エマ(6)』森薫(ビームコミック)
事態は急転直下の展開を見せる。しかも大事だらけ。当事者たちは、さぞかし大変であろう。
個人的に、ウィリアムのように感情の赴くままに行動するタイプの人間、特に成人した男子でありながらそのように未成熟な人間は好きではない。価値観の多様化した現代ですら、社会人としてそのような人間は認められることは少ない。社会規範が厳しく、所属する階級それぞれのモラルに沿って行動することが求められたヴィクトリア朝イングランドにおいて、このような人間がジェントリ階級にいたとしたら、さぞかし愉快な事態になったであろう。まぁ、現に作中にてそうなっているのだけれども。
恋は盲目、とは、よく言ったものだ。もっとも、巻き込まれた周囲の人間は、いい迷惑である。
父祖の築いてきた家門や家業の名声、家族や友人からの信頼、多くの使用人に対する義務、自ら申し込んだプロポーズの言葉さえも裏切るこの男。エマへ恋に対する誠実さは認めるが、あまりの分別のなさ加減に溜息を禁じえない。
いずれにせよ、本巻の最後にて今後の展開のおおよその予定航路が読めてきた。ふたりの結びつきがイングランドの社会にて許容されない以上、ハッピーエンドを求めるには新世界への脱出を図るしかない。子爵の暴挙もなかなか良い示唆をしたというべきか、災い転じて福となす、となりそうな予感。
しかし、エレノア嬢を泣かしたウィリアムは、やはり許せんなぁ。