『天使と呼ばれた悪女』藤本ひとみ(中公文庫)
18世紀末、フランス。後にフランス革命と呼ばれる混迷の時代を生きた二人の女性の生涯をテーマに書き綴った歴史エッセイ。
一人はロベスピエール率いる革命政府による恐怖政治への幕を切ることとなった革命家マラー暗殺事件の犯人シャルロット・コルデー
もう一人は、ロベスピエール失脚のきっかけとなった「テルミドールの反動」に大きく寄与し、「テルミドールの聖母」と称えられ、更にその後、パリに君臨し「第二のマリーアントワネット」と誹られたテレジア・タリアン。
革命期という価値観の不安定に流転する時代に、歴史のうねりに大きく寄与した、しかしあまり日本では知られることの無い女性二人に注目して、その生い立ちから死に至るまでの生涯を追い、その人物を読み解いている。
人間の人格形成の基幹は、幼児期の生活環境によって決定されるという。この二人についても、ほぼそれが当てはまるようだ。
いずれも、家族に恵まれず決して幸福な少女期を過ごしたとはいえないようである。その満たされない心の空隙を埋めるべく、シャルロットは歪んだ思想に、テレジアは男の愛情を求めて、狂奔させたのであろうか。
子供は生まれる家庭や育つ環境を選ぶことは出来ない。これは現代においても当てはまる事実ではある。家庭教育の重要さは、どの時代でも変わらない問題であると考えさせられる。