『奇怪動物百科』ジョン・アッシュトン(ハヤカワ文庫NF)
「旅人は不思議なものを見る」と、当時はそう言われていたようだ。
14〜15世紀にかけて、航海術が発達し、人間の活動範囲が急激に広がった時代。世界は未知なる怪奇に満ちていた。
無邪気なる無知は、数多くのモンスターを産み出した。本書は、そうした数々のモンスターたちを紹介している。
今では動物園や水族館などで簡単に見学できる動物たちですらも、当時のヨーロッパ人たちにとっては、怪奇極まりないモンスターであったのだ。未知なるものへの好奇心は、しばしば真実を思い込みのヴェールで覆い隠す。こうして誤認されたものは、噂の尾ひれを付けて、とんでもない怪物と化す。情報伝達の手段が発達した今日でも、たまにあることではあるが。人間の妄想そのものが、モンスター的であるという証左なのかもしれない。