『新編百物語』志村有弘河出文庫
夏真っ盛り。昼も夜も、うだるような暑さである。こういう時こそ、ひとり寝物語に怪談を読むと面白い。
怪異とは、古来より不条理なもので、何の因果も無く処構わず、唐突に発現する。逆に言えば、正しく通り魔のように発現するからこそ怪異であるともいえる。それに因果、理由付けを求めるのは、因果応報の理を信望する仏教信者のみであろう。
伝承に語られる怪異の多くは、人が魔に堕ちることによって起きるものが多い。見知った者、物、モノが魔に変わる。既知と未知の断絶こそが、恐怖の源泉なのかもしれない。