犯罪精神医学入門 人はなぜ人を殺せるのか』福島章中公新書
01年、大阪教育大学付属池田小学校事件。68年、連続射殺魔事件。99年、池袋通り魔事件。99年、全日空機ハイジャック殺人事件。
本書で取り上げられている世間を騒がせた殺戮事件は、どれも記憶に新しい(68年の事件はさすがにちと古いが)。これら無情かつ不条理で凄惨な殺人事件は、どのような生活歴の人物が起こしたのだろうか? 著者はケーススタディによって、殺人者を“知ろう”と試みる。殺人を犯すのは、精神を病んだ病気によるものなのか、生まれ出でてから育まれた性格なのか。
末尾において、著者による結論が述べられている。殺人者は、先天的な異常を持ち、過酷な少年期を経て生み出される。成長の過程で歪んだ性格と不安定な精神症状によって、周囲環境との葛藤、不適応によって暴発し、衝動的な破滅行動を取る。
確かに我々も破滅的な衝動は内に飼っているといえる。だが、それを押し留める理性がある。その理性を育んできたのは、成長の過程における学習による。人は父母や友人、教師などの他者との関わりによって鍛えられ成長する。その正当な人間との関係を構築できなかった人間は、他者との関わりへの憧憬ゆえに他者に破滅をもたらそうとするのだろうか?