蝉しぐれ藤沢周平(文春文庫)
おなじみの海坂藩を舞台とした、ひとりの少年藩士の成長の軌跡を描く長編小説。
最高に面白かった。時代小説の名手が描くジュブナイル小説がいかなるモノになるかというのをまざまざと見せ付けられた感じである。
幼馴染の少女との儚い初恋と突然の別れ、少年時代の真友たちとの友情、汚名を受けた義父の死、自身の名誉のための戦い。時の流れとともに少年は青年へと成長し、翻弄され続けた運命を斬り開き、己の足で進むべき道を択び、歩んでゆく。
主人公、文四郎はやはりというべきか、秘剣村雨を遣う腕の立つ剣客に成長する。この秘剣遣いというのも作者ならではの持ち味だろう。