『搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た!』阿部真大集英社新書
著者が大学を休学し、一年間に渡りバイク便ライダーの仕事に従事した体験を元に、ワーカーホリック状態に陥っている同年代の同僚ライダーたちを観察、分析した論考。
本書ではここ最近、とかくいわれる「趣味を仕事にする」というキャッチフレーズに警鐘を鳴らしている。
冷静に考えれば、趣味の仕事化は、仕事への傾倒を起こしやすい。つまり、ワーカーホリック状態に陥りやすくなる。
日常生活における趣味の時間は、本来は息抜きの時間であるだろう。それが仕事化すれば生活に占める割合は仕事一辺倒になる。食事、睡眠など必要最低限の時間以外を仕事に割り当てるようになったら、それは完全なワーカーホリック状態であろう。
安定雇用の職場にあれば、労災保障もあるであろうが、本書の主役であるバイク便ライダーのような不安定雇用の職場であれば、保障が無いことが多く、大きな問題となる。
かく言う自分も職種は違うものの、一時期仕事に呑まれた頃があった。仕事にハマり、こなすことが辛いながら楽しくて仕方なく、昼夜を問わず、さらに休日返上で働いていた。後で振り返ってみれば、別にそこまで働かなくても、どうにかなった仕事である。
たぶん、その時は脳内麻薬が出ていたのだろう。何の疑問も抱かずに、ひたすら連続で働いていた。
それがまずいのである。時には冷静に自分のやっていることを見直す必要がある。
仕事に代替はあるが、自分の代替は無い。極論、いくら仕事をがんばったとしても、そいつが壊れれば、会社は代えの人材を登用して挿げ替えるだけなのだ。仕事と心中することはない。
不必要に仕事に手を抜くのは、それはそれで問題だが、必要以上に仕事にのめり込むこともない。生活の糧を得るための仕事だが、仕事のための生活になっては本末転倒である。
情熱を保ちつつ、冷静に仕事に当たるべし。生活を楽しむために。