ゲド戦記(1)影との戦い』アーシェラ・K.ル=グウィン岩波書店
ソフトカバー版が出ていたので手に取る。はるか昔にハードカバー版を読んだ記憶があるが、半ば忘れかかっていたので購入。
訳が良いのか、今読んでも胸を突かれる名言、名文揃いである。
若き魔法使いゲドは、溢れんばかりの才能に増長慢になり、禁断の魔法に手を伸ばし、自らの“影”を解き放ってしまう。ゲドは、自ら生み出した闇の化身“影”に取って代わられる恐怖から、世界を流離う。やがて旧師オジオンとの再会にて、“影”と対峙する勇気を得て、逆に“影”を追跡することとなる。そして遂に、己の闇“影”との対峙し、長い戦いに決着をつける。
この世界の在り様、魔法の考え方が、ことごとく自分の好みに適っている。
超常の力、魔法とは偽りの法則であり、その行使は少なからず世界の均衡を揺らす。無分別な力の行使は、用いる者を滅びへと導く。なんて、含蓄のある比喩だろう。
児童文学に分類される作品だが、普遍的な教訓が幾重にも織り込まれている名作。