『遠く6マイルの彼女』ヤマグチノボル富士見ミステリー文庫
読んでいてこっぱずかしくなるくらいに青春しているラブストーリー。
夭逝した6歳年上の優秀な兄に、何かと比較され続けていた主人公は劣等感にさいなまれ、その重圧から逃避するためにバイクを転がし、無謀な路上レースに明け暮れていた。
ある日、主人公の高校に赴任してきた新米教師は、かつて兄の恋人であった6歳年上の女性だった。憧れの女性に再会した主人公は、恋心を抱く。しかし、彼女もまた死んだ恋人の影を引きずり、主人公に面影を重ねていた……。
理想の偶像化したすでに死んでいる兄という、超えられない(超えようのない)壁の呪縛から逃れようと無様にもがく主人公が、惨めで情けなく、そしてとても愛おしい。
思春期の男なんざ、根拠のない自信と劣等感の狭間で揺れて、思いつめてアホみたいなことをしでかすもんだ。
そして、かなり経ってから思い出して赤面する。そんな恥ずかしい記憶のひとつやふたつ誰にでもあるのではないだろうか?
少なくても俺には、幾つか、ある。
案の定、終盤に勘違いで暴走するのは、青春劇ではお約束。さすがヤマグチノボル、期待を裏切らない。最高だ。
読了後、かつて思春期に肩肘張って、必死に虚勢を張っていた頃がひどく懐かしく、なぜか無性に海が見たくなった。