あやかしびと』(propeller)
伝奇物ヴィジュアルノベルのロゲー。
主人公、双七が神沢学園に転入して3日目と、まださわりの部分しか進められていないが、かなりツボに入っている。
太平洋戦争が終結し、十年が経過した頃。人の身でありながら、異形の姿や力を持つものが現れ始めた。彼らは“人妖病”に罹患した“人妖”と判断され、その他多くの『人間』たちから忌み嫌われた。
主人公、双七は幼い頃にこの “人妖病”に罹患し、離島の隔離施設に強制入院された患者である。そこで双七はすずと出会う。様々な人間が彼から離れていこうとも、彼女だけはずっと双七と共に在った。だが、ある事件を起こした双七はすずと共に施設を脱走することになる。
この施設から脱走して、人妖都市神沢市に潜入するまでのエピソードでかなり泣ける。
確かに「人間は怖い」。幽霊や妖怪といった異質なモノなんぞよりも、よほど同じ人間の方がよほど怖い。その怖さは、その極端な排他性なのだろう。異端を発見したとき、集団の社会性を守るために人間はなんでもやる。その異端が社会の秩序を破壊する前に、いかなる手段を講じてもその異端を取り除こうとするのだ。その排除の手段は正義の美名の下に肯定されてしまう。恐ろしい話だ。
社会問題にもなっている“いじめ”もこの類の話で、いじめられている対象に近づいたものは、その対象と同一視されてしまうことが怖くて、関わることを避ける、無視するといったことがえてして起こる。
人類が他の生物を排除し繁栄してくる過程で機能してきた社会性という特性が、禽獣にも劣る特性に成り下がった瞬間とも言えるだろう。
この手の伝奇物では主人公に類するキャラクターは異類の力を付与されることが多く、この手の話は多いが、それでもやはり痛いものだ。好きだけど。