『橋ものがたり』藤沢周平新潮文庫
橋、という場所をモチーフにした人々の出会いと別れを描いた世話物の短編十編を収録。どれも極上の味わいの傑作ぞろい。
各短編の登場人物たちの生活も収録されたエピソードの後も続く訳で、そこで作中に登場する“橋”がそれを象徴的に表現している。橋は道と道を繋ぐ存在であり、渡った橋の向こうには、長い道のりが続いているということである。
物語は、ハッピーエンドで終わったとしても、その後も時は流れていく。その先の人生はまだまだ続いていく。そのように想像を馳せることのできる結びを描ける作家は、素晴らしいと思う。