『隠し剣孤影抄』藤沢周平(文春文庫)
ひとえに磨きぬいた秘剣をテーマとした短編集。剣を研鑽したが故に各剣士たちが巻き込まれてゆく悲喜こもごのエピソードが語られる。
全編を通じて描かれるのは、舞台となった江戸時代の幕藩体制下の武士のしがらみである。尋常ならざる剣の遣い手ながら、体制の下にあってそれぞれの剣士は、その剣を存分に振ることができない。
それ故に最後に解き放たれる秘剣がすばらしい精彩を放つのだろう。