『凶刃 用心棒日月抄』藤沢周平新潮文庫
用心棒シリーズ4冊目。前作『刺客』から16年後であり、主人公、青江又八郎も40半ばを過ぎている。江戸詰めの役を仰せつかり、四たび目の江戸上りを果たす。16年ぶりに再会する旧友細谷や佐知との出会いは、流れ去った歳月を否応にも感じさせる。
本作の全編を通じて描かれるのは、人生の盛を過ぎた寂寥感である。かつて用心棒稼業を行っていた頃の若さに任せた熱気は、そこには無い。いつまでも青春に止まることはできない。だが、思い出を懐かしむ過去に生きるより、変化に富んだ現在を生きる方が面白い。何があるか分からない。それこそ、人生の妙というヤツなのだろう。