ガンパレード・マーチ もうひとつの撤退戦』榊涼介(電撃文庫
あまりにもプレイヤーの所属する“5121小隊”が、優秀すぎるために、より悲壮な戦争観が持てないことの多い「ガンパレ」だが、このシリーズでは脇役として登場するゲーム中では名も無いいち学兵たちに人格を与え、その描写によって絶望的なほどに悲惨な戦場を表現することに成功しているほうだとは思う。
言うまでもなく、戦争は非人道的だ。
しかしながら、そこにある種のロマンを感じさせる要素は多い。武器、兵器、軍服、正義、戦術、戦略、宣伝、愛国心などなど、枚挙にいとまない。
だが、どんなに正当な理由を積み上げたとしても、大量殺戮の表現を変えただけに過ぎない。放っといても人間は人間を殺すものだが、それを正当化する“戦争”は、やはり遠慮したい。
見るのも、やるのも、巻き込まれるのも、まっぴらごめんである。
不謹慎なもの言いではあるが、“戦争”を愉しむのは、フィクションに留めておくに限る。