攻殻機動隊 凍える機械』藤咲淳一(徳間デュアル文庫
ふたつ目のチャプターにあたる「タチコマの恋」が良い。
自律機械の思考進化の末、人間に対して擬似的な恋愛感情をもつというテーマは割りとSFでは使い古されたネタである。
それでも良いものは、良い。
「記録となった記憶は、もうただの情報に過ぎない」
作中の台詞回しではあるが、これは現実世界の我々にも言えることでもある。
とかく日常の生活は、忙しさにかまけて出来事に流されることが多いが、その流れに身を任せ、記録としての“記憶”を駄々流しにすることが多いのも事実である。
デカルトではないが、考え、それを形に残し、表現しなければ、ヒトの思想は残らない。
中国の諺にあるように、「虎は皮を残し、ヒトは言葉を遺す」。
在り様を遺すために、今日もモノを考える。