『雨過天青』陳舜臣集英社文庫
義戦、という項がある。『孟子』の中から「春秋に義戦無し」という文節を引いている。意としては、孔子の記した年代記『春秋』中(AD722〜483)に義戦がないということを指している。ちなみに続く句は「彼、此れより善きは則ち之有り」。中にはマシな戦争もあるが、それでも「義戦」ではない。つまり「義」の立つ戦なんてのは成立し得ない。そんなことを言っている。
初版は99年3月。ちょうどその頃の湾岸戦争のことについて書いているのだが、つくづくそう思う。人間の歴史において「義戦」なんてものは存在しない。適当な理由をこじつけた、殺戮があるのみだ。