東京国立博物館――唐招提寺
上野の東京国立博物館で行われている特別展だが、ついでに行ってきた。
実は主目的は、常設展示のローテーションで回ってきた所蔵品の展示である。
友人である春桜庵主人氏の情報によれば「獅子王」「童子切安綱」が展示されているという。これは是が非でも観にいかなくてはならない。

券を購入すると特別展の平成館を尻目に、さっさと本館に直行。脇目も振らずに二階へと進む。
あった。名物「獅子王」。
思ったより身幅が狭い、反りも深く、よく斬れそうだ。間違いなく平安末期の作風。気になったのが、数箇所に打ち物傷らしきものがある。……これ、実戦で使ってないかい?
しばらくぼーっと眺めて悦に浸る。
お次は一階の「童子切安綱」である。足早に他の展示をスルーして、刀剣展示室に直行。正面に飾られた「石田正宗」の前には何人か溜まっているが、目当ての「安綱」の前には人が居ない!
最高である。
またも悦に浸って眺める。こちらは先ほどの「獅子王」とは違って綺麗なものだ。江戸時代に六胴落としたとはとても思えない。だが、身幅が厚く、大反りの刀身は恐らく素晴らしく良く斬れるであろうと思わせる。大板目肌の粗さが、舞草の流れをくむことを証明している。今は失われた「髭切文寿」も、おそらくはこういった外見をしていたのだろう。ここでも喰い入るように張り付いていたので、そうとうに不審がられたが、そんなことはどうでも良いので無視して、しばらく夢想に耽る。
ようやく人心地付いたので、特別展示の唐招提寺展に赴く。休日だけあって、えらく混んでいた。ひとまず盧舎那仏と、梵天帝釈天、四天王像を一通りなめて、鑑真和上像を拝んで、早々に退散する。