『ジハードとテロリズム 日本人が知らないイスラムの掟』佐々木良昭(PHP新書
とかく最近の中東情勢の変動によって話題に上るムスリム独自の思想「ジハード」とテロルが密接なかかわりを持つに至ったか。
本書はイスラム特有の教義に基づく生活規範、習慣、思想がなぜ故に他者排除、拒絶の極地であるテロルに収束してしまっているのかを、イスラム教徒である著者自らの思想、体験をもとに読み解いている。
礫砂漠に覆われた中近東地方で芽吹いたイスラム教が、なぜあそこまで頑なで殉教的な宗教になってしまったのか、その定着に至る背景には風土、歴史が密接にかかわっているという論理はよく分かる。また、この唯物的な資本主義主導の世界において、宗教的な精神性を生活の基準とする彼らは、その矛盾に耐えられないというのも、なんとなくは理解できる。
その逃避が世界に対する敵対というのなら、その手段がテロルというのも肯ける。ことの良し悪しは、ひとまず置くが。
世界の富が再分配されない限り、貧富の差は開くばかりで、その均一化は確実にあり得ない以上、いずれイスラムは自らの改革をせざるを得ないだろう。どのように脱皮するかは、ある意味見ものだ。