切り裂きジャック 闇に消えた殺人鬼の新事実』仁賀克雄(講談社文庫)
ヴィクトリア朝時代のロンドン。連続殺人犯として半ば伝説化された殺人鬼“切り裂きジャック”の事件を当時の風俗などの描写も交えながら捜査状況を追跡し、犯人の推理をおこなったドキュメンタリー風読み物。
近代化が進む中、急激に進む貧富の差など、繁栄を謳歌していた大英帝国の旭日の煌きの影で、貧民街を恐怖のどん底に叩き込んだこの殺人鬼は、まさしく積み重ねられた偶然によって、今なお事件の真相とともに闇に隠れ去った。
いままで何十人という犯人像が推理されてきているが、この著者と同じく、真犯人は名も無き一見無害ながら、内に狂気を秘めたスラムの住人であっただろうと思っている。
そうして、おそらくその狂気に自らも喰われて、孤独に死んだのだろう。